ヤフー知恵袋で調べても「ただのデマ」「気にしなくていい」という短い回答か、逆に「本当に当たる!」という煽りコメントしか見つからなかった方へ。この記事では予言の発端・内容・本人の発言・気象庁の見解・実際の結果まで、順を追って丁寧に解説する。
第1章:「7月5日の予言」とは何か――話題になった背景
2025年に入ってから、日本のSNS上で急速に広まった話題がある。それが「2025年7月5日に日本で大規模な地震・大津波が起きる」という予言だ。X(旧Twitter)、YouTube、TikTok、ヤフー知恵袋などあらゆるプラットフォームで「7月5日に何か起こるの?」「本当に地震が来るの?」という疑問が溢れ、気象庁が異例のデマ否定声明を出す事態にまでなった。
この予言の出所は、漫画家・たつき諒氏が著した『私が見た未来 完全版』(飛鳥新社・2021年)という一冊の本だ。元々は1999年に出版されたオリジナル版が、東日本大震災を「予言していた」として震災後にSNSで話題となり、絶版状態の本が中古市場で10万円以上の値をつけるほど注目を集めた。そして2021年、22年の沈黙を破るかたちで「完全版」が発売され、そこに「本当の大災難は2025年7月にやってくる」という記述が加えられていた。
完全版は100万部以上を売り上げ、繁体字版が香港・台湾でも出版され、アジア全体に波及した。「2025年7月5日に大地震が起きる」という噂はYouTubeで数百万回再生の動画を生み出し、さらに「2025年7月5日午前4時18分に何かが起こる」というより具体的なデマまで一人歩きする事態になった。
第2章:たつき諒とは何者か――予言漫画家の正体
まず、この予言の作者「たつき諒」(本名:竜樹諒)という人物を正確に理解することが重要だ。知恵袋の回答では名前だけ登場するが、どんな人物なのかが曖昧なまま語られることが多い。
経歴と漫画家としての活動
たつき諒氏は1954年12月2日生まれ、神奈川県横浜市出身の女性漫画家だ。1975年に少女漫画誌でデビューし、代表作に『人形物語』『時の中の少女』などがある。1994年頃から『ほんとにあった怖い話』などで夢を元にした恐怖短編を連載し、1999年に夢日記をまとめた『私が見た未来』を出版した。同年、漫画家を引退している。
予知夢との出会い
彼女が予知夢を記録し始めたのは1978年頃からで、1985年からは「夢日記」として絵と文章で本格的に記録するようになったという。漫画家として活動するなかで、人の死や災害に関する特殊な夢を繰り返し見るようになったと語っている。
「完全版」をめぐる複雑な出版経緯
注目すべきは、完全版の出版にあたって「なりすまし騒動」があったとされることだ。当初、たつき諒本人ではない人物が「完全版」の出版を企画し、本人になりすまして活動していたとも言われている。後に本人は「出版社の意向中心で出版されてしまった」と語り、真実を伝えるために自費で自伝を出版することを決意したと述べている。この複雑な出版経緯は、予言内容の信頼性を評価するうえで重要な文脈だ。
第3章:予言の具体的な内容――何が起こると書かれていたのか
知恵袋では「結局どんな内容だったの?」という質問が多く、曖昧な要約しか得られないことが多い。完全版に書かれていた内容を、できる限り正確に整理する。
夢の中で見たビジョン
たつき諒氏が夢の中で見たとされる光景は以下のようなものだった。
- 日本とフィリピンの中間あたりの海底が「ボコンと盛り上がる(破裂・噴火する)」様子
- 「2匹の龍が日本とフィリピンの中間地点に向かっていく姿」が映し出された
- その結果として太平洋周辺の国々に大津波が押し寄せる
- 津波の規模は東日本大震災の約3倍にも及ぶ
- 日本だけでなく台湾、フィリピンなどの太平洋周辺国にも甚大な被害が及ぶ
帯には「本当の大災難は2025年7月にやってくる」というコピーが記されており、これが予言として受け取られた。
「午前4時18分」という時刻はどこから来たのか
SNS上では「2025年7月5日午前4時18分」という非常に具体的な時刻まで流布された。これは夢の中に「4時18分」という数字が見えた、という記述に基づいている。しかし、この時刻が「大災害の発生時刻」を意味するのか、それとも夢を見た時間・夢の中で見えた別の意味の数字なのかは解釈の余地がある。後にたつき諒本人は「夢を見た日=何かが起きる日というわけではない」と述べており、特定時刻について「この時刻に大災害が起きる」と断言したわけではないと修正している。
第4章:「7月5日」という日付はどこから来たのか
多くの人が「なぜ7月5日なのか」という根拠を知らないまま情報に接している。この点こそが、知恵袋でも最も解説が不十分な部分だ。
実は「7月5日」という日付は、大災害の発生日として本文中に明記されたものではない。正確な経緯は次の通りだ。
完全版の中で、たつき諒氏がこの「大災難の夢」を見た日が「2021年7月5日」だった。過去の予知夢では「夢を見た日付と同じ日付に、後に現実の出来事が起きる」というパターンがあったとされ、あとがきで「夢を見た日が現実化する日ならば、次の大災難の日は2025年7月5日ということになる」と示唆するような記述があった。読者はこの部分を「7月5日に大災害が起きると断言されている」と解釈し、SNSでその情報が広まった。
構造を整理するとこうなる。
- 夢を見た日:2021年7月5日
- 夢の中で示された大災難の時期:「2025年7月」(おおむね月単位の示唆)
- 「夢を見た日=現実化する日」という仮説:2025年7月5日
- SNSでの拡散:「2025年7月5日午前4時18分」という断定的な形に変化
本来は「仮説」「示唆」レベルだったものが、SNSを経由するうちに「断定された予言」へと変質していった。これが「7月5日」という日付が一人歩きした本質的な理由だ。
第5章:たつき諒本人は何と言っていたのか
「予言した本人が何を言っているのか」は、予言の評価をするうえで最も重要な情報だ。しかし知恵袋の回答ではこの部分が抜け落ちていることが多い。
本人による修正発言
2025年6月、たつき諒氏は『天使の遺言』という自伝を自費出版し、その中で予言の真意について自らの言葉で語った。メディアの取材に対しても「過去の例から『こうなのではないか?』と話したことが反映されたようです。夢を見た日=何かが起きる日というわけではないのです」と述べ、「7月5日に大災害が起きる」という断定的な解釈を否定している。
また「予言への高い関心が防災意識の向上につながるなら前向きに捉えている。私自身も外出時には気を付け、備蓄なども心掛けております」とも語っており、大げさな解釈が独り歩きしてしまったことへの戸惑いが読み取れる。
出版経緯への不満
自伝の中では「完全版が出版社の意向中心で出版されてしまったことを不本意に思っていた」とも明かしている。帯に書かれた「本当の大災難は2025年7月にやってくる」というセンセーショナルなコピーも、本人よりも出版側の意向が強く反映されたものだったことが読み取れる。「私は予知能力者ではなく、ただ夢を記録してきただけ」「予言が一人歩きしてしまったことに驚き、正しく伝えたいと思った」というのが、たつき諒本人の立場だ。
第6章:過去の予言の的中率を検証する
「たつき諒の予言は的中率90%」という情報がSNSで流れていた。これが本当なら確かに信憑性は高い。では実際のところはどうなのか、過去の予言を客観的に検証してみよう。
| 予言の内容(夢の記録) | 対応するとされる出来事 | 判定 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 「大災害は2011年3月」(表紙記載) | 東日本大震災(2011年3月11日) | 的中(とされる) | 最も注目された的中例。ただし「東北で大地震」という具体性はなく、月の一致という点が評価された |
| フレディ・マーキュリーの死に関する夢 | フレディ・マーキュリー死去(1991年) | 的中(とされる) | 具体的な夢の内容と照合が困難で、後付け解釈の可能性もある |
| 富士山大噴火の夢 | 富士山噴火は現時点で未発生 | 未的中 | 時期が未確定のまま「予言」として扱われている |
| 新型感染症の広がりを示唆する夢(とされる) | COVID-19パンデミック(2020年〜) | 解釈次第 | 完全版での記述が「コロナを予言した」と後付けで解釈されたもの |
| 2025年7月の大津波・海底噴火 | 2025年7月5日:大災害は発生せず | 外れ | 本人自身が「7月5日に起きるとは断言していない」と修正していた |
「的中率90%」説の問題点
「的中率90%」という数字に科学的根拠はない。実際には次のような問題がある。
まず、曖昧な表現による後付け解釈の問題だ。「大きな災害」「何か重大なことが起きる」といった表現は、解釈次第でどんな出来事にも当てはめられる。次に確証バイアスの問題がある。外れた予言は話題にならず、当たった予言だけが繰り返し語られるため、的中率が実際より高く見える。また出版経緯の複雑さも信頼性に影響する。完全版は本人の関与が限定的な部分もあると言われており、予言内容そのものへの疑問もある。
第7章:気象庁・科学者の見解――「地震予知」は可能か
予言騒動が盛り上がる中、気象庁は「2025年7月5日に大地震が起きる」という噂について、明確に「科学的根拠はない」「地震の発生日時を予測することは現在の技術では不可能」とデマを否定した。
現代の地震科学の限界
現代の地震学においても、特定の日時を指定した地震発生の予測は技術的に不可能とされている。これは日本に限らず世界共通の認識だ。プレートの動きや断層のひずみを観測することはできても、「いつ」「何時何分に」地震が起きるかを事前に予測する技術は存在しない。気象庁が津波警報を発令できるのは地震が発生した後(発生から約2〜3分後)であり、発生前に警告を出すことは現状では不可能だ。
南海トラフ地震との混同
この予言騒動で混乱を生んだ要因のひとつに、「南海トラフ巨大地震」との混同がある。南海トラフ地震は実際に国の専門機関が「30年以内に70〜80%の確率で発生する」と警告している、科学的根拠のある話だ。しかしそれは「いつか起きる可能性が高い」という確率論的な話であり、「2025年7月5日に起きる」という特定日時の予測とはまったく性質が異なる。「南海トラフ地震はいつか起きる(科学的事実)」と「7月5日に起きる(科学的根拠なし)」は別の話だ。
第8章:なぜここまで広がったのか――SNS拡散の仕組み
科学的根拠がないと気象庁まで否定した予言が、なぜここまで社会に浸透したのか。この点を理解することは、今後の情報リテラシーにとっても非常に重要だ。
東日本大震災の記憶と「的中実績」
日本人にとって東日本大震災は深く刻まれたトラウマだ。「あの予言が当たったなら、今度の予言も…」という心理は非常に理解できる。特に大きな震災を経験した世代や、身近に被害を受けた人々にとって、予言への感受性は高い。
「恐怖のコンテンツ化」という現代現象
SNS時代には「不安・恐怖を煽るコンテンツほどクリックされやすい」という構造がある。YouTubeのアルゴリズムも視聴時間やコメント数を重視するため、センセーショナルな予言動画は再生回数を稼ぎやすい。実際に関連動画が数百万回再生されるものも現れた。
集合的確信の形成
「みんなが言っているから本当かもしれない」という心理(社会的証明)も大きく働いた。X(旧Twitter)でトレンド入りし、ヤフー知恵袋に大量の質問が寄せられ、テレビのバラエティ番組でも取り上げられる。こうした広がりが「根拠はないが無視できない」という雰囲気を醸成した。
香港・台湾・アジアへの拡散と経済的影響
完全版の繁体字版が香港・台湾で出版されていたこと、また香港の有名風水師が「2025年7月頃に日本で巨大地震が起きる」と発言したことも重なり、海外でも噂が広まった。香港から日本への旅行キャンセルが相次ぎ、一部航空便が減便するほどの経済的影響が生じた。根拠のない噂でも、社会・経済に現実の損害を与えることがある。
第9章:実際に7月5日に何が起きたのか
これが多くの人が最も知りたかった「答え」だ。
結論から言えば、2025年7月5日に「予言が示唆したような大規模な地震・大津波」は発生しなかった。予言は外れに終わった。
注目された「トカラ列島地震」との関係
ただし、2025年6月下旬から7月にかけてトカラ列島周辺で群発地震が発生し、短期間に900回以上の地震が観測されたことも事実だ。7月には最大震度5弱も記録された。これが「予言が当たったのでは」という声を一部で生んだが、専門家は「トカラ列島は本来地震活動が活発なエリアであり、予言との直接的な関係はない」としている。
「外れた後」の反応
予言が外れたことで、一部のSNSユーザーは「日付の解釈が違っていただけで、別の日に起きる」と主張し始めた。これはいわゆる「予言の後出し修正」であり、どんな結果でも予言が正しかったように見せられる構造だ。こうした反応そのものが、予言コンテンツが廃れない理由のひとつでもある。
第10章:この予言騒動が社会に与えた影響
予言が外れたからといって「何も問題なかった」わけではない。この騒動は日本社会にさまざまな影響を与えた。
経済的影響
香港や台湾からの訪日旅行キャンセルが相次ぎ、一部航空便の減便が起きた。観光業者への打撃は実際に数値として現れた。根拠のないデマでも、それを多くの人が信じることで現実の経済損失が生まれる。これが現代の「インフォデミック(情報の感染爆発)」の怖さだ。
心理的・精神的影響
「信じてしまって娘と過ごしました」「その日は有給をとります。家族と、その日を迎えたいです」──Amazonのレビューに残るこれらのコメントは、一部の人々がどれほど真剣にこの予言を受け止めていたかを示している。過度な恐怖や不安を抱えてしまった人たちにとって、これは実際の心理的負担だった。
防災意識の向上という副産物
一方でポジティブな面もある。この騒動をきっかけに非常食や水を買い足した人、防災グッズを見直した人、家族で避難経路を確認した人が増えたことも事実だ。「南海トラフ地震はいつか来る」という事実は予言とは無関係に正しい。その意味では、誤った予言が防災意識向上の偶然のきっかけになった側面もある。
第11章:予言を正しく受け止めるために――防災の本質
たつき諒本人が「予言への高い関心が防災意識の向上につながるなら前向きに捉えている」と語った言葉は示唆に富む。予言の真偽にこだわるより、「もし大規模な自然災害が来たら自分はどうするか」を考えるきっかけにすることが、最も実用的な反応だ。
今すぐできる防災の基本
| カテゴリ | 具体的な対策 |
|---|---|
| 備蓄 | 水(1人1日3L×3日分)、非常食、常備薬の確保 |
| 避難経路 | 自宅から最寄りの避難所までのルートを歩いて確認する |
| 家族との共有 | 「地震が起きたら○○に集合する」など家族間のルール決め |
| 建物の安全 | 家具の転倒防止グッズ設置、耐震診断の確認 |
| 情報収集 | 気象庁・自治体の公式アプリ・メール通知の設定 |
| 防災グッズ | 懐中電灯、携帯充電器、救急用品のセットを玄関近くに置く |
| ハザードマップ | 自宅・職場・学校のハザードマップを確認し、浸水・土砂リスクを把握する |
情報を見極める3つの問い
SNSで不安を煽る情報に接したとき、次の3つを自問してほしい。
- 発信源は誰か? 気象庁・大学の研究機関などの一次情報源か、それとも個人や商業目的のアカウントか。
- 科学的根拠は示されているか? 「夢を見た」「霊視した」ではなく、観測データや研究論文があるか。
- その情報で誰が得をするか? 本が売れる、動画の再生回数が上がる、広告収入が増えるといった商業的動機がないか。
「予言」ではなく「確率」で考える習慣を
南海トラフ巨大地震は今後30年以内に70〜80%の確率で起きるとされている。これは「いつか来る」という科学的な事実だ。「予言」が当たる・当たらないに一喜一憂するより、この科学的なリスクに対して着実に備えることが本質だ。防災の専門家が繰り返し述べているように、「いつ来てもおかしくない」という心構えを日常に組み込むことが、私たちにできる最も合理的な行動だ。
まとめ:「7月5日予言」で本当に知るべきこと
この記事で解説してきた内容を最後に整理する。
予言の発端は漫画家・たつき諒氏の予知夢を元にした『私が見た未来 完全版』だ。帯に「本当の大災難は2025年7月にやってくる」という記述があり、これがSNSで拡散した。「7月5日」という日付は大災難の発生日として本文で断言されたものではなく、「夢を見た日(2021年7月5日)=現実化する日」という仮説的な記述が独り歩きしたものだ。
たつき諒本人は「夢を見た日=何かが起きる日ではない」と明確に修正し、「不安を煽ることが目的ではなかった」と自伝で述べた。気象庁は「科学的根拠はない、特定日時の地震予知は現在の技術では不可能」と否定した。そして実際に2025年7月5日に大規模な地震・大津波は発生せず、予言は外れた。
しかし、この騒動をきっかけに防災を見直すことは大いに意味がある。南海トラフ地震はいつか本当に来る。予言に振り回されず、科学的なリスクに対して冷静に備えることが、私たちにとって最も賢明な行動だ。

